チア男子!! 朝井リョウ

 

男子チアリーダーたちの青春スポーツ群像劇
女子の世界だった大学チア界に、男子のみの新チームが旋風を巻き起こす!? 人を応援することで主役になれる世界で唯一の美しいスポーツ、チアの魅力も満載の、笑って泣ける傑作青春小説。書き下ろし。

 

これこそ「THE 青春!」な本です。男子大学生たちが、時に激しくぶつかり合い、励まし合い、支え合う、そして着実に成長していく姿が圧巻でした。

 

認知症の祖母に、自分の存在を思い出してもらうために、今は亡き両親と同じくチアを始めた一馬。

人生をささげていた柔道を、けがをきっかけに辞め、新たな道へと進みだそうとする春樹。

幼馴染であり親友である二人は、男子だけのチアリーディングチームを結成します。

大学に張り付けた、派手な勧誘ポスターに始まり、履修していない体育の授業に潜り込み、運動神経のいい男子をスカウト。

そんなこんなで集まったメンバーは、本気でチアへの情熱を燃やしているメンバーもいれば、なんとなく楽しそうだからと、ノリでチームへの参加を決めるメンバーもいます。

体つきだって、運動神経抜群の、チア向きのスラっとした体形の持ち主もいれば、余分な脂肪を蓄えて一人で倒立もできないメンバーも。

メンバーが全員個性豊かな選り取り見取りすぎて、果たしてこんな集まりでチアができるのだろうか?なんて、余計な心配をしてしまいました。

ですがこの物語の登場人物たちは、華麗な演技で私の不安を爽やかに払拭してくれます。

もちろん、初めからうまくいったわけではありません。
手探りの状態で、何度も果敢に難しい技に挑戦しては、失敗を繰り返してしまいます。

そんな中でも、汗と涙にまみれながら、時に激しくぶつかり合い、励ましあい、支えあう、そして着実に成長していく彼らの姿は、私の胸を強く打ってきました。

終盤シーンにかけての、全員が呼吸を合わせて一つの壮大な演技を作り上げていく姿は、圧巻です。


この本を読んでいる間は、自分もこの本の中の登場人物の一人になって、大切な仲間とともにかけがえのない時間を手に入れていくような、熱い感覚を一緒に味わえました。

社会人になってから、少し色あせていた青春を思い出させてくれた一冊でした。