愛なき世界 三浦しをん

 

恋のライバルが人間だとは限らない!

洋食屋の青年・藤丸が慕うのは〝植物〟の研究に一途な大学院生・本村さん。殺し屋のごとき風貌の教授やイモを愛する老教授、サボテンを栽培しまくる「緑の手」をもつ同級生など、個性の強い大学の仲間たちがひしめき合い、植物と人間たちが豊かに交差する――

本村さんに恋をして、どんどん植物の世界に分け入る藤丸青年。小さな生きものたちの姿に、人間の心の不思議もあふれ出し……風変りな理系の人々とお料理男子が紡ぐ、美味しくて温かな青春小説
 
愛なき世界は愛にあふれていました
表紙の可愛さに魅了されて手に取ってみました。
「愛なき世界」という題名だったので、表紙に反して冷たい話なのかなと想像していましたが、実際には愛に満ちあふれた心温まる本でした。


率直に二人の恋愛模様も面白かったですが、それ以上に現役の大学院生には共感できる部分が詰まった本だと思います。
普段あまり小説を読まない(読む暇がない)であろう理系大学院生にこそ、ぜひ読んでもらいたいと思いました。


研究分野は違えど、理系の院生としての経験がある私には、
「実験が成功したかも!!」という、舞い上がるような幸せや、その後失敗だとわかったときの、体の芯まで冷たくなるような絶望感、締め切りに追われるプレッシャーなどが痛いほどよくわかります。
でも、心強い仲間に支えられながら、研究の楽しさや本質を見出していく本村さんの姿に励まされ、勇気をもらいました。

ぜひ、二人の恋も成就してほしいな!!

愛の形は一つじゃないから、
本村さんが植物以外を愛せないと思っても、それも含めて藤丸が本村さんを愛する。
そして、そんな藤丸に支えられながら研究にまい進することだって、十分「愛」だと私は思います!