レビュー・死にがいを求めて生きてるの

長い前置きと、一番最後に訪れる恐怖
 

誰とも比べなくていい。
そう囁かれたはずの世界は
こんなにも苦しい――

「お前は、価値のある人間なの?」

朝井リョウが放つ、〝平成〟を生きる若者たちが背負った自滅と祈りの物語

植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。
二人の間に横たわる〝歪な真実〟とは?
毎日の繰り返しに倦んだ看護士、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年ディレクター。
交わるはずのない点と点が、智也と雄介をなぞる線になるとき、 目隠しをされた〝平成〟という時代の闇が露わになる。

今を生きる人すべてが向き合わざるを得ない、自滅と祈りの物語。 

 


 

本の題名になっている、「死にがい」とは何だろうと思い、手に取ってみました。

この本は、登場人物である6人の名前が各章題になっています。
初めに本の目次だけをざっと見たときは、それぞれの人が独立して死生観について語ったものをまとめた短編集だと思うかもしれません。

けれども、実際に読み進めるほど、それぞれの登場人物の視点から書かれた話が次第に絡み合っていき、次第に一つの壮大なストーリーを描き出していることに気づかされます。

自らの「死にがい」についても考えさせられる深みを持った本でもありますが、
私は特に、この本のミステリー要素が面白いと思いました。

最初のうちは、なかなか話の展開が見えず、ページ数も500ページ近くととても長いため、漠然とした先行きをひたすら追いかけているような気持になります。

最後まで読む前に、飽きてしまう方もいるかもしれません。
正直私も、途中で挫折しそうになりました。

けれども、終盤に近付くにつれて次第に明らかになっていく話の全貌と、その中で見えてくるいびつな友情というものに、最後はゾッとさせられます。
伏線をすべて回収したラストのシーンには、

「今までの全ては、この瞬間のための長い前置きだったのか!」

と目の前のもやが、全て晴れるような感覚に陥ります。

根気強く最後まで読むことはたいへんですが、読んだ人だけがこの最骨頂を味わうことができます。