レビュー・北里柴三郎(上)-雷と呼ばれた男 新装版 山崎光夫

コロナ禍の今こそ知ってもらいたい!

伝染病との戦いに生涯を費やした男の生涯を!

 

第一回ノーベル賞を受賞するはずだった男、北里柴三郎。その波瀾に満ちた生涯は、医道を志した時から始まった。「肥後もっこす」そのままに、医学に情熱を傾ける柴三郎は、渡独後、「細菌学の祖」コッホのもと、破傷風菌の純粋培養と血清療法の確立に成功する。日本が生んだ世界的医学者の生涯を活写した伝記小説。


大河ドラマ渋沢栄一が取り上げられているために、若干影が薄い(?)新千円の顔、北里柴三郎さん。

ですが、このコロナが流行っている今だからこそ知ってもらいたい!

伝染病との戦いに生涯を費やした男の生涯を!

 

この本は、北里柴三郎本人を主人公に、その生涯を描いた小説です。

難しい伝記などではなく、比較的読みやすい話だと思います。

 

若かりし柴三郎が、医学の道を志す決意するに至った師匠との出会い。

ドイツに渡り、ペスト菌破傷風の治療法を発見するに至るまでの莫大な苦労と情熱。

帰国後、伝染病研究所を設立し、伝染病予防と細菌学の研究に魂を注ぎ続けた一生。

 

「日本細菌学の父」と呼ばれた偉大なる医学者の生涯を、笑いあり涙ありで鮮やかに描き出しています。

 

柴三郎が一躍有名な医学者として名を馳せたのは、破傷風菌の血栓療法を確立したことがきっかけです。

この業績を評価されて、初代ノーベル生理・医学賞を受賞するとも言われていたそうです。

 

結局は、当時アジア人への差別などもあり、柴三郎がノーベル賞を受賞することは叶わなかったのですが…。

 

柴三郎はドイツに留学中、恩師である世界的な細菌学者コッホの下で破傷風菌の研究に取り組みます。

しかし柴三郎は当時、国費で「期限付きの」留学を許された身でしかありませんでした。

 

あくる日もあくる日も寝る暇も惜しんで研究に打ち込む日々。

しかし、あと少しというところで留学の期限が迫ってきます。

 

「なにがなんでもこの研究で成果を出したい!」

 

その強い思いと研究への高い情熱が、頭の固い日本の役人をも動かします。

柴三郎は、当時異例であった留学延長の権利を獲得し、やがてノーベル賞候補に選ばれるまでの、高い業績を挙げるのに至るのです。

 

そんな偉大過ぎる柴三郎ですが、実は人間味あふれた面白みがあるのも魅力。

10歳以上年の離れた若い奥さんが家にいるにも関わらず、研究のプレッシャーに負けて女遊びを繰り返し、それを今でいう週刊誌に書かれてしまいます。

 

またあくる日は、自らが設立した伝染病研究所で、気に入らない部下にすぐに癇癪を起こす始末。癇癪がひどすぎて、あだ名が雷になってしまいます。(これが、この本の副題の由来ですね。)

 

偉大なんだかダメ親父なんだかわからない、でも憎めない北里柴三郎さんの魅力に、

ぜひ触れてみてください!