レビュー・君はどこにでも行ける 堀江貴文
2016年出版の堀江貴文さんの本、「君はどこにでも行ける」を紹介します。
著者である堀江さんが、世界各国を旅して目の当たりにした
"世界と日本の比較"を通し、私たちにも世界に目を向けていってほしい、という
テーマが込められています。
堀江さんは、出所してからの3年半、多い時には月に数か国のペースで海外へ旅行へ
出かけているそうです。これまでに巡ったのは、なんと28か国58都市!
そうやってたくさんの国々をめぐる中で堀江さんは、世界が変わっていく様子を
目の当たりにしてきました。
特に、この20年ほどは、かつてないぐらい変化に富み、技術革新のスピードの速い
年だったとか。
そしてその変化に取り残されているのが、過去には観光立国としてアジアナンバーワンの経済発展を遂げていた、わが国日本。
この本書では、堀江さんが数々の国を見て回り感じた、新興国やかつて貧乏だった
国の急激な成長、それと比べた日本の実情、というテーマで話が進んでいきます。
読み進めるうちに、いかに自分が世界を知らず、井の中の蛙で生きてきたか痛感
させられました。
それでは詳しく話をまとめていきます。
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「日本はどれくらい「安く」なってしまったのか」
1章では、海外と比べた日本経済の現実について述べられています。
まず初めにちょっと恐ろしい話。
2015年の末、メディアアーティストの落合陽一さんのtwitterにて
「日本人のセルフイメージって、2010年のGDPのままな気がする。
これを聞いてどう思いましたか?
私は正直、日本はそんなに貧乏な国だったんだと、愕然としてしまいました。
これは私の世界経済への無知さもあると思いますが、中国は著しい経済成長を遂げて
いるとはいえ、未だ「新興国」のくくりであると考えていました。
日本よりも高いGDPを出しているのだろうと思っていましたが、もうとっくに倍以上に抜かれていたんですね。
どうして日本はまだまだ世界経済を引っ張る存在であるなんて、私たちは考えているのでしょうか。
やっぱり、世界の実情を「知ろう」としていないからですかね?
メディアは、海外の方が日本より発展してるなんて話、そんなに大々的に報道しないと思いますし、コロナウイルスの時は、海外と違って「お願いベースでここまで感染を
抑えられている日本ってすごい!」みたいなことしか言ってませんでしたしね。
トヨタとか、富岳とか、日本の科学技術はすごい!とか、
そんな情報ばかりに触れていると、
「こんなに技術的にも経済的にも発展してる日本に生まれて幸せ!」なんて、
思考停止しちゃうかもしれません。
そんな状況で自ら進んで、海外がいかに発展しているかなんて、情報を手に入れようとはなかなか思わないかもしれないですね。
ちなみに、日本だと2000円を切る値段で買えるユニクロのフリースが、中国だと5000円以上するらしいですよ。リッチですね―。
中国で日本円で4,5万円ほどあれば、昔は爆買いできたのが、今は2,3着買えればいい方だとか。
そんなこんなで暗い話になってしまいましたが、堀江さん曰く、
「安くなったことは、悪いことではない」そうです。
安いということはつまり、日本の優れた製品や文化、ビジネススキルを、アジアの
富裕層が勝手に世界へアピールしてくれることに繋がります。
日本の経済力が弱くても、観光立国として諸外国から興味を持ってもらえれば、
それだけ発展する余地があるということ。
まあ裏を返せば、これからは日本国内の力だけで発展していくのは難しいってこと
なんでしょうね、ちょっと悲しいけど。
私たちも、「日本大好き!」なんてずっと日本に閉じこもってないで、実際に外に
出るかは別としても、心はもっと海外に向けていかないといけないのだなーと
思わされました。
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堀江貴文が気づいた世界地図の変化
2, 3章では、堀江さんが実際に旅した国々を、アジアと欧米その他の分けて、実際に
目の当たりにしたアジアの驚異的な経済発展の様子や、アメリカ、ヨーロッパ、そして
南米などで起きている経済やテクノロジーの変化が書かれています。
堀江さんが旅した国々は、特にアジアは「新興国」と呼ばれる部類に入るのでしょう。
ですが読んで率直に、日本だけが経済的に恵まれている国ではないし、むしろお金持ちのレベルは日本以外のアジアの国々の方が高いのだろうなーと思いました。
チャイナマネーでバブっている中国はもちろんのこと、ベトナムやカンボジア、
ラオスなどの話も出てくるのですが、正直これらの国をなめていた自分がいました。
バングラデシュって今、世界第二位のアパレル生産国なんですね。
ちなみに一位は中国。
バングラデシュは世界最貧国とも言われているそうですが、そんな国だってもちろん
富裕層もいます。そんな当たり前のことすら頭から抜けてしまっているような、
自分の世間知らずに焦りましたね。
これらの章は、純粋に紀行文として読んでも面白い内容だと思います。
遊び上手な堀江さんが、その国々で遊んだ話を読むと、旅行って純粋に観光名所だけをめぐるだけが楽しみ方ではないのだなーと思いました。
遊び上手な堀江さんのこと、本当に尊敬します。
その中でも、「女の子の外見は、都市の経済の成熟ぶりを測る絶好のバラメータ。
豊かさに比例して女の子はかわいくなる」なんて話、結構面白かったです(笑)。
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国境(ボーダー)は君の中にある
最後の話は、この本のタイトルである「君たちはどこにでも行ける」につながる
内容です。
これまでの話で散々日本がいかに経済的に後れを取っているか聞いて、日本にがっかりした方もいるのではないでしょうか。
私は正直、日本ってそこまですごくなかったのかー、なんて思ってしまいました。
かといって、「私は日本を捨てて、発展している中国で働きます!」なんてすぐに気持ちを切り替えられる人は、そんなにいないのではないでしょうか…?
逆に言えば、ここでそんなこと言える行動力のある方が、海外でビジネスチャンスをつかみ、大富豪への階段を歩みだすのかもしれませんが…。
ちなみに堀江さんは、海外には
「行きたければ行けばいいし、行きたくなければいかなければいい」とおっしゃって
います。
円安だし、海外の情報を多分に得られる今、どうしても海外に行かなければならない
理由はあまりないそうです。
ですが、「外に出る」ことについて、難しい意味付けはいらないのではないか
とのことでした。
行きたいから行く、行きたくければ行かない。それだけのことなのです。
堀江さんは単純に、その場にしかないもの、そこにしかないものを見たい、
楽しみたい、味わい尽くしたい、という理由で世界を飛び回っているそうです。
まずは頭の中の国境を消してみましょう。
パスポートを手にして、お金とスマホを用意して、飛行機に乗るのは、単なる一つの
手段でしかありません。
頭の中の国境がなくなれば、私たちはどこにでも行けます。
実際に日本を出なくたって、たとえ田舎暮らしだろうと、入ってくる情報の質は格段に上がります。
今までの私みたいに、「日本こそがすぐれている国」なんて母国至上主義みたいなのも、頭の中の国境さえなければちっぽけなものだったと思うことができるのではないでしょうか。
「頭の中を消そう。そうすれば君はどこにでも行ける。」だそうです。私もこの言葉を胸に、広い世界を楽しんで生きていこうと思います。